「トレンディエース」の母校に大器。
快速右腕にスカウトは「見方が変わった」

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 2月に練習を訪ねた際、小椋監督は「小辻をリリーフで使いたい」という構想も語っていた。瀬田工の復活には小辻の力が必要だ。だが、小椋監督は同時に小辻の将来も案じていた。だからこそ、近江戦はリリーフで使うことを決めたのだった。

 結果的に「賭け」は失敗に終わる。1回に1点を失うと、2回には二死無走者から4安打3四球が絡んで一挙6失点。大勢が決したところでライトから小辻がマウンドに上がった。

 その投球練習の初球。小辻はフルスロットルの腕の振りで、ストレートを投じた。昨日には見せなかった殺気すら感じる腕の振りだったが、明らかに力んでいた。

 試合後、小辻は「体の開きが早くなって、横のスライダーが抜けてカウントが取れませんでした」と反省の弁を口にしている。

 小辻の力をもってしても、大きく傾いた試合の流れを変えることはできなかった。3回に1点、4回に2点を失い、瀬田工は0対10の5回コールドで敗れた。

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 投球練習での初球、あの全力投球には「なぜもっと早く自分を使ってくれない?」という小辻の怒りの意思表示もあったのだろうか。そう考えて試合後の小辻に尋ねると、やんわりと否定された。

「試合前にピッチング練習がちょっとしかできていないので、(規定の投球練習中に肩を)つくり切るためにマックスを意識しました」

 そして小辻は、小椋監督をはじめ指導スタッフへの感謝を口にした。

「何度も合宿をやっていただき、体が大きくなった。高校生活において、一番大きかったです」

 大会中の8月4日にすでにプロ志望届は提出している。8月29日、30日に甲子園球場で開かれる高校生合同練習会には、進路候補先への練習参加の日程と被るため心身の疲労を考慮して不参加になった。だが、第一希望であるプロ入りへの思いは揺るがない。

 小辻は「野球をやっているみんなが憧れるようなピッチャーになりたいです」と夢を語った。

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