スカウトがぞっこん!25歳の右腕。平均球速130キロ台だった投手に何が? (2ページ目)

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi
  • photo by Asa Satoshi

 そんなスカウトの思いを知ってか知らずか、当の本人である高橋康二は試合中、ダグアウトを離れ、記者席裏の通路で、Tシャツ姿でパイプ椅子に座っていた。

「最近はいつもこうですよ。前まではベンチに入って、みんなと一緒に声を出していたんですけど、気を張ったままだとマウンドでもたないんですよ。やっぱり、抑えは気持ちをガッと持っていかないといけないので。試合前半はリラックスするようにしています。試合を見ながらずっと緊張するのではなく、マウンドに上がる時に気持ちを最高潮に持っていく感じです」

 今シーズンのBCリーグは、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、試合開始から2時間45分経過以降は新しいイニングに入らないことになっている。

 高橋は、ゲーム前半はベンチを離れ、展開と時間を見ながら、テンションをコントロールしているという。序盤に大差がつきながらも、突如試合が緊迫し、急遽出番が回ってくることもあるが、その方が気持ちを持っていきやすいと言う。

「緩んだところから急に気持ちを持っていけるんで。要は、オンとオフの切り替えです」

 すっかりクローザーとしての貫禄がついてきたようだが、昨年までのストレートの平均球速は130キロ台。最速でも140キロそこそこという「並み以下」のピッチャーだった。それが突如として殻を破ったのには、2つの要因があった。

 ひとつは指導者との出会いだ。昨年、オセアン滋賀ユナイテッド(現・ブラックス)から福井ミラクルエレファンツ(ワイルドラプターズの前身球団)に移籍した高橋の前に現れたのは、当時投手コーチをしていた福沢だった。

 福沢は高橋を見て、まず投球フォームのバランスの悪さに驚いたという。

「手取り足取り教えたというよりは、これだけは直しておかなければならないというところを伝えて、それで自分なりに修正したということです。それが彼には、はまりました。ほかの選手にうまくはまるかわからないですけど」

 本人曰く「勝手に球速が上がっていった」らしいが、新しいフォームがはまり、昨シーズン終盤には常時140キロ台後半をマークするようになった。

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