尽誠学園の強さの秘密。バッテリーが急成長した「参謀」の指導法とは

  • 寺下友徳●文 text by Terashita Tomonori
  • photo by Kyodo News, Terashita Tomonori

 こうして、近年欠けていた「冷静な自己分析」と「相手の洞察」がチームに備わった。独自大会でも「この夏は全て任せていた」と指揮官も全幅の信頼を置く橘のリードで見事優勝。準決勝まで4試合連続コールド勝ち。5試合47得点・チーム打率.353。チーム防御率0.97。まさに「ぶっちぎりで優勝する」(菊地)の公言どおりだった。

 3日後の8月17日「甲子園交流試合」の相手は智辯和歌山。この1試合にかける尽誠学園の意気込みは並々ならぬものがあった。

 和歌山県・南部リトルシニア出身の村上が「智辯和歌山には中学時代に対戦した選手もいる。性格もある程度わかっています」と不敵な笑みを浮かべれば、橘は青山コーチを交えて智辯和歌山の3試合分の映像を8時間にわたって徹底研究。結果、攻撃では「どの投手も外角中心の配球なので踏み込んで打っていく」という対策を立てた。

 また、プロ注目の1番打者・細川凌平(3年)はじめ、強打線封じにもぬかりはなかった。実は、村上は夏を前に智辯和歌山封じの秘策・スクリューを習得していたのである。

「あまり手首をひねったボールが投げられないので、落ちるボールを考えてきました。そこで青山コーチからアドバイスももらって外角から沈むスクリューをマスターしたんです。県大会準決勝から投げ始めたんですが、手ごたえも得られたので、甲子園でも使えると思いました」(村上)

4 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る