仙台育英、敗戦も悲願の日本一へ。大器の2年生両腕がしっかり成長中 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 仙台育英に入学後はともに1年夏から甲子園マウンドに立ち、昨夏の全国ベスト8進出を経験している。だが、須江監督はその時点でふたりの逸材を慎重に育成することを明言していた。

 須江監督は『ウサギとカメ』をふたりに見立てて、こう語っていたことがある。

「笹倉がカメで、伊藤はウサギです。笹倉は完成度の高い投手ではないので、目先の結果を追わせる時と追わせない時をしっかりと分けたい。将来は160キロを投げるような、菊池雄星投手(マリナーズ)を追える可能性がありますから、スケールを小さくしたくないんです。

 伊藤は逆に、今のような器用さだけで終わらせてはいけない。奥川恭伸くん(星稜→ヤクルト)がモデルになってくるでしょう。ふたりとも大きく育てるということは同じです」

 今夏、大きな成長を見せたのは伊藤だった。甲子園で投じた23球のうち、変化球はわずか2球だけ。ストレートはすべて140キロを超えた。荒々しく投げる姿は、それまで変化球を器用に操っていた伊藤の新たな一面を世に知らしめた。

 昨秋に結果を残せず、コンディション不良のため明治神宮大会ではベンチ入りメンバーから外れたこともあった。伊藤は「悔しかったのが一番」と当時を振り返る。

「ちゃんと投げられるようになってから、冬場に遠投を重点的にやって、あとはいつもやっている柔軟性を高めるトレーニング、春になってウエイトトレーニングもやって少しずつステップアップしていきました」

 今夏は短いイニングでの登板だったためストレートで押す投球スタイルになったが、先発投手としてゲームメイクする際には変化球も織り交ぜていくという。須江監督の言う、「器用さだけ」ではない姿が今後は見られそうだ。

 一方の笹倉は、球速が最速149キロに達したとはいえ、まだまだ自身の求めるレベルには遠く及ばないと考えているようだ。なにしろ、笹倉の当面の目標は「投打で世代を代表する選手になること」だからだ。

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