明石商・来田涼斗が挑む0.23秒の壁。「間を感じられない男」からの卒業は近い (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 あれから1年が経ち、来田は2020年甲子園交流試合で再び甲子園の舞台に立った。チームは桐生第一(群馬)に3対2と競り勝ったが、来田は4打数1安打。唯一のヒットも外角のボールに対して引っかけたゴロが内野の間を抜けたもので、会心の当たりとは言いがたかった。

 試合後、来田は「宮下(宝)投手も蓼原(慎仁)投手も厳しいコースばかりで自分のバッティングが全然できませんでした」と反省の弁を口にしている。

 一方、狭間監督は試合前、来田に対してこんな「予言」をしていたという。

「今日、おまえ、ファーストゴロとセカンドゴロで終わりやで。俺、だいたい当たるから」

 実際にはファーストゴロはなかったが、セカンドゴロがひとつ。ヒットも当たり損ねの引っかけた打球だった。

◆明石商・狭間監督がマイナスから目指した甲子園>>

 狭間監督が予言した根拠はこうだ。

「(交流試合は)1日しかないので、『狙ったろう』と力が入って、チェンジアップやスライダーに前の肩でカベをつくらずに引っかけて、ファーストゴロやセカンドゴロになる。それは目に見えていたんです」

 狭間監督としては、あえて口にすることで来田に逆方向を狙う意識を持ってもらうことを期待していた。だが、思うような結果は出なかった。試合後、狭間監督は来田に「ほら見てみい。(予想が)当たったやないか」と語りかけたという。

 そして、狭間監督は「まあまあ」と言葉をつなげ、こう語った。

「これからやと思います。粗削りでいいと思います」

 ところで、1年前に「タイミングを計れない男」と評した件は、どうなったのだろうか? そう尋ねると、狭間監督は質問が終わる前にスラスラと答え始めていた。

「計れるようになりつつあります。ちょっと、きっかけをつかみつつあるのでね。これから上に行けば、修正できると思いました。最初は本能だけでやっていて全然ダメやったんですけど、今はタイミングを計ろう、間を感じようというものができてきました」

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