履正社と大阪桐蔭の「2強物語」。特別な夏から新章が始まった (4ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 履正社の先発・岩崎峻典は再三のピンチを迎えるも、6回3失点ときっちり試合をつくった。3番を打つ小深田は右に左に打ち分け4安打。4番の関本も中押しとなる貴重なタイムリーを放ち、大会中14打席連続出塁を記録した1番の池田凛も3出塁。昨年夏の日本一を知る男たちが中心となり、ついに悲願を達成したのだった。

 試合後、すっかり陽が落ち、照明灯の光が注ぐグラウンドで両チームの取材が続いていた。三塁側のベンチ前では岡田監督が取材を受けていた。

「子どもらが大阪桐蔭に勝つぞと、とくに昨年秋に負けてからやってきました。今日は、僕は何もしていません。子どもたちの力です。しっかり力を出してやってくれました」

 そう語る声には、大きな壁を越えた喜びと安堵感が伝わってきた。

「甲子園交流試合」注目のスラッガー10人>>

 一方、一塁側ベンチ前では自身の監督デビューでもあった1999年夏以来、履正社に敗れた西谷監督が淡々と敗戦の弁を語っていた。

「守りはどこまで粘り強くできるか、攻撃ではチャンスでどれだけ一本が出せるか。目指してきた野球ができませんでした。(相手が履正社ということは)僕たちはあまり考えてないですけど、負けるとやっぱり気持ちよくない。夏、秋、春を含め、これからも戦っていかないといけない相手なので、次に当たった時は今日負けた悔しさをしっかりぶつけていきたい」

 あらためてイレギュラーな夏であることは、両監督のインタビューからも伝わってきた。21年ぶりの結果に沸き立つなか、記者たちからの話題は「甲子園交流試合」へと移っていった。履正社は15日に昨年夏の甲子園で戦った星稜(石川)と対戦し、大阪桐蔭は17日に東海大相模(神奈川)と戦う。

  西谷監督はぼんやりと視線をグラウンドに向けたまま言った。

「これまで甲子園は勝って行くところだと思っていたので、今年は不思議な感じです」

 呪縛から解き放たれ、新たな手応えを胸に進む履正社と、スコア的には完敗に終わったが2年生に逸材が揃う大阪桐蔭。イレギュラーな夏に動いた2強物語は、ここからどんなセカンドステージを迎えるのだろうか。

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