「畑中が必要だ」。鳥取城北で唯一ベンチ入りの2年生が期待に応えて3安打 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 鳥取城北の野球部は大阪、兵庫を中心に越境入学者、いわゆる「野球留学生」が多いことで知られる。主将の吉田は大阪の名門・枚方ボーイズ出身で、河西は兵庫夢前(ゆめさき)クラブ出身だ。

 一方、畑中は1ケタの背番号をつける選手のなかで唯一の鳥取県出身で、鳥取ボーイズから鳥取城北に進んでいる。

 近畿圏出身の選手は自己主張が強く、地元出身者が圧倒されるというエピソードをよく聞くが、畑中は「関西出身の人に引け目を感じなかった」と動じなかった。鳥取城北に入学したのも「部員が多いなかで勝負して、絶対に甲子園に行きたい」という強い野望があったからだった。

「ずっと鳥取にいて、城北に入った時はみんな実力が高くて、体も大きくてビックリしたんですけど、絶対にレギュラーを獲ろうと思いました」

 約110人もいる寮生に対して、畑中は数少ない自宅から通う部員である。鳥取の好きなところを聞くと、「砂丘です」とはにかみながら教えてくれた。

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 試合は5対2と逆転した鳥取城北が優勢になったと見られたが、明徳義塾は鳥取城北の守備の綻びをついて8回裏に2点を返す。すると、今度は明徳義塾の控え部員、家族が陣取る一塁側内野スタンドから断続的に拍手が発生した。

 さらに9回裏、二死一、二塁で明徳義塾の4番・新澤颯真(しんざわ・そうま)が放った打球はライトを越える逆転サヨナラタイムリーになった。鳥取城北は健闘したものの、名門の牙城を崩すことはできなかった。

 試合後、畑中は胸から足元まで甲子園の土で汚したユニホーム姿でこう語った。

「3年生は51人いるんですけど、メンバーに入っている人もそうでない人もみんな仲がよくて、層も厚いんです。でも、これだけ実力がある3年生でも、ここぞというところで負けてしまう。明徳のような強いチームは野球以外でも私生活がしっかりしているのだと思います。城北には足りない部分があるので、そこを潰してやっていきたいです」

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