横浜高の背番号1は最速152キロの剛腕。
それでも最大の武器は制球力だ

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

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 試合開始1時間前。背番号1の右腕と背番号10の左腕がライト側の芝生に並んでキャッチボールをしている。

 いずれも185センチ以上の長身。背番号10の左腕は長い手足をムチのようにしなやかに使い、軽い腕の振りなのにボールが相手に向かってぐんぐん伸びてくる。

 一方、背番号1の右腕は重厚な体つきをしており、各関節の可動域は広いとは言えず、いかにもパワーピッチャーという印象を受ける。それでも1球1球、セットポジションをつくってから、折り目正しくボールをリリースしていく。

松坂大輔も背負った横浜高の背番号1をつける木下幹也松坂大輔も背負った横浜高の背番号1をつける木下幹也 おそらくプロスカウトがこのキャッチボールを見たら、多くは背番号10の左腕を「将来有望」と評価するのだろう。

 もし、自分が背番号1の立場だったらと想像してみる。毎日、隣でこんな伸びやかな腕の振りと好球質を見せつけられ、背番号1をつける自分よりも注目されている。血気盛んな高校生でなくても、嫉妬を覚えても不思議ではない。

「そうですね。ストレートの速さも変化球のキレも自分は松本に劣っていると思いますし、憧れているところもあります」

 背番号1をつけた木下幹也(もとや)は、背番号10の松本隆之介についてそう語った。そして、こんな自負も付け加えた。

「でも、やっぱり、試合をつくるという意味では自分が自信を持てる部分だと思います。それは松本がいたから、認識できたことです」

 木下と松本、ふたりは名門・横浜高校のエースの座を争う逸材である。

 松本は身長188センチ、体重84キロの長身左腕で、この春に自前の計測ながら最速152キロに達したという。昨年、及川雅貴(現・阪神)を視察に訪れたスカウトが「及川より素材は上」とうなったほどの潜在能力を持っており、今秋のドラフト上位指名は堅いと見られている。

 木下は身長185センチ、体重88キロの右腕。こちらも今年に自前の計測で最速152キロをマークしたというが、試合での投球を見る限り、失礼ながらそこまで速く見えない。本人は「田中将大さん(ヤンキース)のようなパワー系のピッチャーに憧れています」と語る。しかし、現時点で木下以上のキレ、スピード感を持つ高校生投手は、ほかにもいるだろう。

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