7イニング制導入も。甲子園を失った夏に
「高校野球の未来」を考える

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 キャプテンでもある二俣は、7イニング制の戦い方についてこう語っている。

「7イニング制になると決まってから、練習、練習試合から先制点を取ることを課題にして意識してきました」

 先取点の意味合いが変わる。それは7イニング制を戦ううえでの共通認識のようだ。宇都宮商の山口晃弘監督は言う。

「先制点の重みは絶対に違ってきます。ウチは日頃から選手に『ミスで与えた点は返ってこない。相手のミスでもらった点は有利になる』と言っていますが、その重みが7イニングだとますます大きくなります」

 宇都宮商は小山西に5対2で勝利したものの、終盤に追い上げられた試合展開だったこともあり、山口監督はこうも語った。

「もし8回以降もやっていれば、どうなっていたかはわかりません。ドラマが起こるのは、本当はここから先。7回以降に野球は動くのかなと感じます」

 一方で、選手の疲労に関しては、「7回も9回もあまり変わらない」と山口監督は語る。それ以上に「やっぱり試合と試合の間の日数が大きい」と試合日程の重要性を強調した。

 連戦になればなるほど、投手層が薄いチームは「7イニングなら......」と酷使傾向が強くなる可能性もある。

 だが、独特な戦い方をしたチームもある。國學院栃木は、初戦は7イニングで10投手、2戦目は6イニング(コールド勝ちのため)で4投手をつぎ込んだ。

 てっきり勝敗以上に選手に経験を積ませることを重視したのかと思ったが、柄目直人(つかのめ・なおと)監督はキッパリと「温情ではありません」と語った。

「勝ちにいくための策としての継投です。ウチは今年だけでなく、継投策で戦ってきましたから。たとえ9イニング制でも、今年は5人での継投を考えていました」

 つまり、投手ひとりあたり1〜2イニングでの継投を基本的な戦略にしているのだ。國學院栃木は神山陽登(はると)、シャピロマシュー一郎ら好投手を多数擁し、今夏2試合でわずか3失点しか許していない。柄目監督が続ける。

「エースひとりで完投する時代は終わったと思っています。ケガを防止して、大学以降につなげていくことを忘れてはいけない。また、スポット的に選手を替えるメリットもありますから」

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