公式戦3イニングでドラフト候補。シャピロマシュー一郎は「ロマンの塊」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 だが、傍らで聞いていて、このやりとりが空虚にすら思えた。もし公式戦が続いていれば、シャピロはこの「146」という数字をあっさり塗り替えてもなんら不思議ではない。将来的には150キロどころか160キロを狙える器であり、現時点での最高球速にさほど大きな価値を見いだせないのだ。

 シャピロは「高校在学中に150キロを出したい」と語る一方で、こんな思いも漏らしている。

「150といっても、あくまで通過点で目標ではありません」

 しかし、シャピロを手放しに逸材と褒めちぎるわけにもいかない事情がある。シャピロ目当てで球場を訪れたあるプロスカウトは、「将来とんでもない選手になるかもしれません」と前置きしたうえで、こう続けた。

「評価が難しいところですね。三軍のある球団ならじっくり育てられるかもしれませんが、二軍に置いてどうなのか......。高校では短いイニングしか投げていませんし、すぐファームの試合で投げられるとは思いません。何より高校でも鍛え込めていないので、プロの練習についていけるのか不安もあります」

 シャピロの公式戦デビューが高校最後の夏までもつれ込んだ理由は、成長痛にある。高校1年の冬から2年の冬まで、左半身の腰からヒザにかけて慢性的に痛みに苦しんだ。シャピロは言う。

「痛みが出たり、出なかったり。とにかく苦しかったです。最初はケガだと思ったんですけど、成長痛と言われて。それは苦痛でした」

 高校入学時点での身長は182センチで、3年間で10センチ近く伸びた。正式な身体検査はしていないが、シャピロは「まだ伸びています」と明かす。体の成長が続いているということは、故障防止のために練習の強度を落とさざるを得ないのだ。

 春からはコロナ禍による練習自粛期間もあったため、高校生活で練習したと実感できた期間は、高校3年6月からの2カ月間だけだという。それでも、シャピロは心置きなく練習できた時間を「本当に楽しかったです」と充実した表情で振り返った。

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