公式戦3イニングでドラフト候補。
シャピロマシュー一郎は「ロマンの塊」

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

独自大会、名将たちの苦悩>>

 シャピロマシュー一郎という名前を聞くようになったのは、今年の6月半ばを過ぎた頃だった。

 投手育成に定評のある國學院栃木には今年も速球派エースの神山陽登(はると)をはじめ、好投手がひしめいている。そんななか、高校3年生にして公式戦未登板のシャピロにプロスカウトも注目しているという。

「将来はプロに進みたい」と語る國學院栃木のシャピロマシュー一郎「将来はプロに進みたい」と語る國學院栃木のシャピロマシュー一郎 シャピロはアメリカ人ジャーナリストでNHKの大相撲解説者として知られる、デビッド・シャピロさんを父に持つ。

 どうしてもシャピロの存在が気になり、栃木の独自大会(2020栃木県高校野球交流試合)に足を運んだ。8月3日、栃木県総合運動公園野球場での足利戦。栃木県の独自大会は日程の都合からベスト8決定までで打ち切りになっており、國學院栃木の3年生にとっては勝っても負けても最後の公式戦だった。

 そんな試合でシャピロは先発に起用される。これが公式戦初先発だという。

 投球練習を1球見ただけで、「ロマンの塊だ」と思わされた。身長191センチ、体重92キロ(ベスト体重は95キロとのこと)の巨躯に、左足を高々と上げ、右腕がしなって遅れて出てくる腕の振り。ダイナミックな投球フォームと底を見せていない様子がありありと伝わるボールには夢が詰まっていた。

 シャピロは2イニングを投げ、被安打2、奪三振6、失点1で交代する。変化球の制球が定まらないシーンも見られたが、2イニング目は振り逃げを含む1イニング4奪三振の離れ業を演じた。

 試合が終わった後、インタビュースペースで複数の記者に囲まれたシャピロは、まず自分の投球について振り返った。

「調子は上がってきましたが、まだまだすべてにおいて技術が足りないと感じました」

 そしてシャピロは、報道陣から「最速」の確認を求められた。

「今日の146キロは自己最速?」と尋ねる記者に、シャピロは「自己最速タイです」と答える。「その前の146キロはいつ出したの?」という問いには、「7月の練習試合です」と返した。

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