4年後のドラフトは豊作になる。コロナ禍が変えた逸材球児たちの進路 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

「回転数を気にして練習するようになってから、ボールが指にかかるようになりました。今の最高数値は2470回転です。冬に下半身のトレーニングと体重を増やしたことで、球速が上がってキレもよくなりました」

 球速は140キロをコンスタントに超え、指先にかかったストレートは猛烈な勢いで捕手のミットを叩いた。一條は「秋よりも今のほうが投げていて快感があります」と充実した表情を見せた。

 一方の菊地は最終回の二死から打者1人だけ登板。ランナーが一塁にいたため、当初はクイックモーションで投げていたが、途中で捕手の中山琉唯(るい)が「足を高く上げろ」とジェスチャーを伝えてきたことでスイッチが入った。

 その直後、「狙った」という菊地は151キロ、また次に152キロと自己最速を立て続けに更新して、試合を締めくくった。

「ブルペンからあまりよくなかったんですけど、ベンチ前のキャッチボールから少しずつ(指の)かかりがよくなっていました。結果的にMAXを更新できてよかったです」

 そう語る菊地に、意地悪な質問だと自覚しつつも聞かずにはいられなかった。

── 今なら、プロに行きたいんじゃないですか?

 菊地は「いや、でも......」と少し慌てた表情を見せたものの、意を決したようにこう答えた。

「(大学に)最初に決めたときは少し思ったんですけど、その後に対外試合が許可されてからは、大学とかプロとか自分のなかで迷いがない状態で投げられました。やっぱり、その結果が練習試合や今日の結果につながったのだと思います」

 男が一度決めた以上、もう迷わない──。そう自分自身に言い聞かせているようにも見えた。

 常総学院は24日の次戦で伏兵・多賀に2対3で敗れ、早くも敗退。今大会は無観客試合であり、全国的なテレビ放送が始まる前の終戦だった。全国の野球ファンが一條、菊地という逸材を見られる機会は大学以降に持ち越された。

 未曾有の疫病に翻弄された2020年の高校球児たち。たとえ時間はかかっても、一回りも二回りも大きな存在となって再びドラフト戦線に浮上することを祈りたい。

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