4年後のドラフトは豊作になる。コロナ禍が変えた逸材球児たちの進路 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

自己最速の152キロをマークした常総学院・菊地竜雅自己最速の152キロをマークした常総学院・菊地竜雅 一方の菊地は、身長182センチ、体重89キロのパワーピッチャー。育成力に定評のある取手シニア時代から有望視された投手だった。高校入学時点で130キロも出なかった一條に対して、菊地は137キロを計測。そのスピードはぐんぐん伸び、高校2年夏には早くも150キロに到達する。

 中学時代の恩師である石崎学監督から「ペドロ・マルティネス(元レッドソックス他)を参考にしなさい」とアドバイスを受け、往年の大投手仕様のスリークォーターから剛球を投げ込む。さらに自信を持つシンカーなど、実戦で使える変化球を数多くマスターしている。昨秋は右肩の不安があり、一條に出番を譲ったが、その馬力は超高校級だろう。

 冬が明け、実りの春を迎えるはずのタイミングでコロナ禍に見舞われた。常総学院の野球部は全国一斉休校要請や緊急事態宣言に合わせて解散と集合を繰り返し、慌ただしく不安な日々を送った。

 春の県大会が中止になり、5月には夏の甲子園の中止も決まった。そして一條と菊地は悩んだ末、進路を「大学進学」に定める。常総学院の佐々木力監督()は「親御さんを交えて3~4回は面談をしました」と明かす。
※現在、佐々木監督は退任し、コーチの島田直也氏が監督に就任した

「2人とも私が指導してきたなかでは最高の素材です。一條は60キロで高校に入ってきて、『大谷翔平(エンゼルス)は85キロで高校を卒業したんだ』という話をして、体重が増えて見事にスピードとキレが変わってきました。菊地はU−18代表候補にも入っていて、春の代表合宿(中止)にも参加するはずでした。152キロが出ましたが、まだまだ伸びしろがあります。2人とも私は高校からプロに行けると思うんですけど、無理やり行かせようとは思いません」

 佐々木監督の高評価とは裏腹に、本人たちは3年間の高校生活のなかで確固たる自信が得られなかったようだ。一條は言う。

「中学の軟式野球部から高校に入って、まだまだ勉強が足りないと感じています。一人でやっていける力を持てたらいいなと思って、大学に行くことに決めました」

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