9球団のスカウトが静岡に集結。「中村奨成より強肩の捕手」とは何者だ (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 この日、二俣は送球エラーをひとつ犯していた。離塁の大きかった二塁ランナーを刺すために投げたボールが引っかかり、外野に逸れたのだ。このエラーは失点につながり、浜松工の反撃を許す一因になっている。

 二俣は「事前にショートとアイコンタクトをして狙っていたんですけど、力んで逸れてしまいました」と悔しさを隠さない。

 とはいえ、プロ即戦力の高校生捕手など歴史的にほとんどいない。二俣が才能豊かな捕手の素材であることは間違いない。

 鈴木博志(中日)、加藤脩平(巨人)など、数々の好選手を育成してきた山内監督は定年のため今夏で勇退する。山内監督は感慨深そうにこうつぶやいた。

「偶然であっても、こういう選手に出会えたのは本当に指導者をやってきてよかったと思いますし、指導者冥利に尽きます。今年は3年生に恵まれましたし、甲子園があれば上を目指してやりたいチームでしたが......それは残念でしたね」

 磐田東は二俣のワンマンチームではない。エース左腕の野ケ本英典は身長190センチの長身左腕で、スピンの効いた好球質のボールを投げ込む好素材。3番・センターの山下拓真も攻守に馬力の強さを感じさせる強肩強打の外野手だ。本来であれば、甲子園を狙えるだけの陣容は整っていた。

 だが、コロナ禍の影響で甲子園がなくなったとはいえ、磐田東の選手のモチベーションが下がることはない。二俣は選手を代表して言った。

「あと5勝すれば監督の(夏の静岡大会)通算100勝、優勝すれば101勝になるので、監督の花道を飾ろうとみんなで話しています」

 その後、磐田東は7月18日の2回戦・掛川西戦を逆転サヨナラ勝ちでものにし、山内監督の通算100勝まであと4と近づいた。そのカウントダウンが順調に進めば進むほど、強肩捕手・二俣の名声は全国へと広がっていくに違いない。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る