機動破壊→スペクタクルベースボールへ。健大高崎が目指す大仕掛けの野球 (5ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 主将も務める戸丸は「チームメイトには弱いところを見せたくなかった」と言う。だが、高崎の実家では、両親の前で報われない心情を吐露した日もあったという。

 そんな戸丸の救いになったのは、母・はるみさんの言葉だった。

「母から『これで終わりじゃない。みんながどれだけ甲子園で野球をしたいか見てきて、知ってるから』と言ってもらえて、救われた思いがしました。気持ちをわかってくれる人が身近にいてくれたことは大きかったです」

 野球部の活動は緊急事態宣言が発令された翌日、4月8日から休止になった。寮が閉鎖され、部員はそれぞれの実家に帰省。以来2カ月以上も自主練習期間を過ごすことになる。実家が近い戸丸は下らと合同練習することもあった。

 朗報が届いたのは6月10日だ。センバツ出場校を甲子園に招待して、1チームあたり1試合の交流試合をすることが決定したのだ。青柳監督は「甲子園が中止になって選手たちはかわいそうでしたが、新たな目標ができてよかったです」と語った。

 6月15日に健大高崎の全体練習が再開。ブルペンに入った下は、自己最速となる143キロを計測する。今までめったに超えなかった140キロもコンスタントに到達し、自分の成長を実感したという。進学希望の戸丸に対して、下は「プロ志望届を提出するつもりです」と高卒でのプロ入りを目指している。

 群馬バッテリーの存在とともにクローズアップされそうなのは、「機動破壊」に代わる新たなキャッチコピー「スペクタクルベースボール」である。

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