甲子園中止で語り継がれる「悲劇の世代」。世代屈指の好投手が進路の悩みを激白

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 人間にとって、希望がなくなるほどつらく悲しいものはない。中京大中京のエース・高橋宏斗もそれを痛感したひとりだ。

 センバツ中止はショックだった。出場が決定していただけではなく、秋の明治神宮大会優勝校として、甲子園でも日本一を狙っていたからだ。同時に、「世代ナンバーワン投手」の称号を不動のものにする場でもあった。

昨年秋の神宮大会で優勝した中京大中京の高橋宏斗昨年秋の神宮大会で優勝した中京大中京の高橋宏斗「世の中の情勢を見て、ある程度は(中止を)覚悟していた部分はありました。何らかの形で開催してほしいというのが本音でしたけど......」

 高橋はセンバツ中止が決定した3月11日のことをこう振り返る。そして、こう続けた。

「無観客でも優勝を狙おうと取り組んでいたので、中止が決定したあとは、正直、モチベーションをどう保てばいいのかわかりませんでした。2、3日は高橋(源一郎/監督)先生のミーティングも耳に入らなかったというか、気持ちの部分で切れているというのはありました」

 それでも、まだ夏がある----無理やりにでも前を向く材料はあった。だが、その夏もなくなってしまえば、その先が見えない。5月20日、自宅で聞いた夏の甲子園中止のニュースは、受け入れがたいものだった。

「センバツのショックよりも、そっちのほうが大きかった。センバツが中止になった段階で、目標を夏の甲子園優勝に切り替えていたので......」

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