「日本一空気の読めない高校」と言われた
盛岡大付の主将がまさかの転身

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

「もし自分たちの代で『甲子園がない』と言われたら......、本当に考えられません」

 藤田はさっそく同期のメンバーに声をかけ、メッセージ動画を作成した。藤田はこんなメッセージを送ったという。

「目標と目的を忘れないようにしよう。甲子園は目標だけど、目的は『格好いい漢(おとこ)』になることでしょう。甲子園がなくなったからグレるんじゃなくて、気持ちを立て直していこう。何事も真っすぐに本気でやれるのは高校時代しかない。今やらずに後悔する人は、その先もずっと後悔する。そんなダサい人間になるのはやめよう」

 その言葉は、自分自身に言い聞かせている部分もあったのかもしれない。藤田は8月に予定されているキックボクシングの大会に向けて、調整をしているという。

 格好いい漢になりたい──。

「男」なのではなく、「漢」なのだと藤田は力説する。それは、盛岡大付の恩師・関口清治監督の口癖だったという。

「関口先生はよく言っていました。ただの『田んぼの力』の男なんじゃない。『漢』だろうと。漢なら格好の悪いことをするなと」

 ガイジン部隊と言われた高校時代から変わらない思いを胸に、藤田貴暉は今日も仕事とキックボクシングに、そして自分の人生に向き合っていく。

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