2020.06.11

山田哲人がドラ1指名を確実にする一発。
歳内宏明から超技ありの一打だった

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 話を聖光学院戦に戻す。スコアブックを確認するとカウントは1−1。捕手は外に寄りアウトコースを要求した。山田もその気配を感じ、目つけは外にあったはずだ。そこに完全な逆球のインハイ。普通なら見逃すか、スイングしても差し込まれるかのどちらかだろう。だが山田は瞬時に反応し、見事な軸回転でレフトスタンドまで運んでみせた。この技ありの一発で、山田は「文句なしのドラフト1位候補」となったわけである。

 試合は山田の一発で同点に追いつくも、8回裏に聖光学院が3点を奪い勝利。夏の大会で福島県勢が初めて大阪代表を破ったわけだが、立役者は2失点完投の歳内だ。

 歳内は中学時代に宝塚ボーイズ(メインの練習場は伊丹市)でプレーしていた時から見る機会が多く、そういった意味で思い入れの強い選手だった。

 子どもの頃からプロ野球選手になることが目標で、高校野球に興味はなかった。そんな歳内の気持ちが変わったのは中学1年の夏。早稲田実業と駒大苫小牧の決勝再試合を甲子園で生観戦。大会を通して本調子でないなか、チームを背負い投げ抜いた宝塚ボーイズOBである田中将大(現・ヤンキース)のピッチング、エースとしての佇まいに魅せられた。「自分も甲子園で投げてみたいと初めて思ったんです」と、高校野球への情熱が一気に上がった。

 宝塚ボーイズで学んだ野球に合うチームへ......と考え、田中が駒大苫小牧へ進んだように、歳内は聖光学院への進学を決めた。2年からエース番号を背負い、初めて甲子園のマウンドに立ったのがこの夏だった。