「ドクターK」松井裕樹が圧巻の投球も田村龍弘・北條史也の最強コンビに屈す

  • 佐々木亨●文 text by Sasaki Toru
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

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こんな対決あったのか!
高校野球レア勝負@甲子園
第2回 2012年夏
松井裕樹(桐光学園)×田村龍弘、北條史也(光星学院)

 2012年夏の甲子園、準々決勝。試合開始予定の午前9時が近づくと、桐光学園の2年生エース・松井裕樹(現・楽天)は、おもむろに三塁側のベンチ前に現れてキャッチボールを始めた。肩慣らしの意味合いがあったのだろう。だが、ふわりと浮かぶ、明らかに力感のないボールが気になった。前日の試合(3回戦)から中1日も経っていない連投とあり、試合前の囲み取材では「左肩がちょっと重い」と疲労は明らかだった。

4試合で68個の三振を奪った桐光学園の2年生左腕・松井裕樹4試合で68個の三振を奪った桐光学園の2年生左腕・松井裕樹 松井は、対戦校の打者が口々に"消える"と称したスライダーを武器に1回戦の今治西戦で10者連続を含む22奪三振、2回戦の常総学院戦でも19奪三振をマーク。3回戦の浦添商戦でも12奪三振を記録するなど、3試合で53個の三振を奪うなど、大会ナンバーワン左腕に君臨していた。

 準々決勝の相手は、3季連続の甲子園決勝を狙う光星学院(現・八戸学院光星)。1回表のマウンドに立った松井はゆっくりと間を取り、静かに投球練習に入った。

「気力で投げた」

 そう語ったように、打者と対峙する松井は疲れをものともせず、本能むき出しの快投を見せる。1番・天久翔斗にレフトフェンス直撃の二塁打を許すも、2番・村瀬大樹は内角をえぐるストレートで見逃しの三振。そして、3番・田村龍弘(現・ロッテ)を迎える。

 徹底したインコース攻めでフルカウントまでもつれた田村との勝負は、最後もまた内へ食い込むスライダーで空振り三振に仕留めた。

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