腹切り発言の開星・野々村監督が復帰。切実だった事情と新指導への思い (7ページ目)

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Inoue Kota

「今の選手たちは私の野球を見て入ってきているわけではないし、気質自体も変わってきています。いたずらに厳しくする、恐れを抱かせるような指導は通用しない。府中東の時は私も若かったので、選手たちの兄のように接した。その時よりも年齢を重ねた開星では父のように、そして今回は孫に接する祖父のイメージで指導していきます。『こうしろ!』と頭ごなしに言うのではなく、『こうやるのはどうだ?』と諭していく。このスタイルを目指しています」

 当初は3月1日から練習に合流する予定だったが、新型コロナウイルスの影響で休校措置が長引き、現部員との初顔合わせは3月25日までずれ込んだ。春休み期間中は、最大3時間の制限付きで全体練習を実施できたが、島根県内でコロナウイルス感染者が出たこともあり、新年度開始早々再び休校に。采配の勝負勘を取り戻す意味でも重要視していた春の島根大会は中止、予定していた練習試合が取り止めになるなど、マイナス要素を上げればきりがない。しかし、それでも野々村の闘志は衰えない。

「3年生にとっての高校野球は残りわずかしかない。"国難"とも言える状況で先が見えづらいですが、3年生たちに『野々村監督と過ごした高校野球最後の時間はよかった』と思ってもらうためにはどんな指導をすべきか考えていきたい」

 紆余曲折を経て、再びグラウンドに帰ってきた山陰の名将。往時を彷彿させる気迫が満ちた言葉の数々に、期待を抱かずにはいられなかった。

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