腹切り発言の開星・野々村監督が復帰。
切実だった事情と新指導への思い

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Inoue Kota

 3月1日付けでの監督復帰が2月初旬に報道されると、ある甲子園常連校の元監督から、一通のメールが届いた。そこには「野々村くんなら絶対できる!」「明るく、元気に日本一を目指してください」という激励のメッセージが綴られていた。そして、最後は「高校野球は"人づくり"」の言葉で結ばれていた。

「以前連絡先を交換したことを覚えていてくださったみたいで。大御所からの連絡で、一気に背筋が伸びました(笑)。メールにもありましたが、私に期待されているのはこの"人づくり"の部分。今の開星野球部は、心のこもったあいさつなど、野球以前にやらなければならないことが欠けている。それらをきちんとできる、社会に出ても恥ずかしくない人間に育てるのが私の役目だと思っています」

 今のところの任期は「後任候補が決まるまで」。1年前後での退任を基本線としている。

「明るく、前向きに夢を追える野球部をつくり直して、後任の監督が不安なく自分の野球を表現できる環境にする。それを大前提にしつつも、勝ちを目指さなければ選手たちに失礼。絶対この子たちをうまくするんだ、甲子園に連れて行くんだという信念は曲げずにやっていきます」

 自身が最後に甲子園で采配を振るったのは8年前、現在の3年生は小学4年生の時だ。リアルタイムで"野々村野球"を見た経験がない選手も多く、県外出身のある選手は「采配を見たことはなくて、『テレビに出ている人』のイメージが強いです」と正直な感想を話す。これについて、野々村は言う。

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