「岡本和真に負けた」。そして元U 18日本代表の野球エリートは起業を目指した (6ページ目)

  • 沢井史●文 text by Sawai Fumi
  • photo by Sawai Fumi

 安田は苦笑いを浮かべるが、野球に打ち込んだおかげで多くの人とつながり、好きな仕事にも打ち込めている。明徳義塾は北海道から沖縄まで全国各地から生徒が集っていたおかげで、いまでもつながっている仲間が全国にいる。

 そして安田がオーダースーツ事業と並行して行っているのが、学生支援だ。おもに野球部出身の学生を中心に、母校に限らず、全国の大学生を相手にボランティアでセミナーを開催している。現在の大学生とは、2、3歳しか年齢が離れていない。

「年齢の近い自分がこれまで経験してきたことをすべて話すので、なんらかの力になれればと思ってやっています。今はコロナの影響でなかなか厳しい部分もあるのですが......」

 ある時、セミナーのために車で10時間以上かけて山口の大学まで出向いたこともある。

「夢を追っている時って、成功する自分の姿をイメージする人がほとんどだと思うんですけど、自分は逆で、失敗した時にどうしようっていつも考えています。人生って、必ずしもいい時ばかりではなく、悪い時がくる。その時にどうすればいいのかを、常に頭に置いておかないといけないと思っています」

 いま野球界で活躍している選手も、いずれは引退する時がやってくる。そんな時に、安田はセカンドキャリアについて相談に乗ってあげられるような立場になっていたいとも思っている。

 昨年末に行なわれた明徳義塾のOB会で、恩師である馬淵史郎監督から「おまえは大阪人やから、商売には向いとるよ」と言われたという。そして最後に、安田はこう言って笑った。

「いつか馬淵監督のスーツをつくって、届けに行きたいですね」

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