智辯和歌山・高嶋元監督の壮絶秘話。
「くそったれ!」精神で築いた甲子園68勝

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 まさに「くそったれ!」と歯を食いしばる日々が続いたが、一方で藤田の話になると、必ずこうした言葉が出てくる。

「あの人がおらんかったら、今の僕はない」

 とはいえ、辞表も3度書き、藤田に渡したことがあるが、すべて破り捨てられた。

「こんなもん書く暇があったら練習せんか!」

 なんとか藤田を見返したい。高嶋の闘志にますます火がつき、練習は激しさを増した。しかし、結果はすぐには出ない。「あとがない」と覚悟を持って臨んだ監督4年目の春。県大会後に事件は起きた。

 2回戦で敗れた相手が宿敵・天理。高嶋が監督になってから、直接対決で5連敗となった。「同じ相手に何回負けとるんか!」と藤田の怒りが爆発。これだけに収まらず、監督交代と高嶋のコーチへの異動も決定した。

 この夏は、藤田と和解して部長として野球部に復帰していた和泉が監督、高嶋部長で戦ったが、またしても県大会決勝で天理に敗れると、直後に高嶋が監督に復帰。ところが仕切り直しとなった秋、今度は選手による練習ボイコット騒動が起きた。厳しすぎる練習が理由だったが、高嶋が選手に対する思いを部員たちに伝えると解決。チームにも一体感が生まれ、県大会3位から挑んだ近畿大会でベスト8入りすると、翌春(1976)のセンバツに監督として初めての甲子園出場を果たした。

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