日体大で本気で二刀流に挑む逸材。
指名漏れも2年後を見据え肉体改造中

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 思えば、高校時代から独特な感性を持った選手だった。ウエイトトレーニングを好まず、身体感覚に強いこだわりを持っていた。打者としては対戦相手が右投手の場合はすり足、左投手の場合は足を上げるなど、タイミングの取り方を変えた。

 3年夏の公式戦では、こんなプレーがあった。矢澤が放った内野ゴロをセカンドが弾き、ライト方向に転がった。それを見た矢澤は、一塁を回って大きくオーバーランすると、あわてて一塁に戻る仕草を見せた。それを見たライトが一塁に送球した刹那、矢澤は踵を返して猛然と二塁に向かって全力疾走し、余裕で二塁を陥れた。試合後にこのプレーについて聞くと、矢澤は平然と「狙っていました」と語った。とにかく鋭敏なフィーリングを持つ野球選手なのだ。

 高校時代の体のサイズは身長172センチ、体重63キロ。いかにも線が細かったが、前述したように本人には体の使い方に強いこだわりがあった。それでも、大学に入学後は辻コーチとコミュニケーションを重ねるなかで、心境の変化が生まれた。

「自分の場合は走ることも腕の振りも、スピードが持ち味なので、それを生かしたいと思っていました。でも、高校時代はそれではプロに行けなかった。技術練習だけした場合と、筋力を上げた上で技術練習をした場合の成長幅を比べてみたら、明らかに筋力を上げたほうが成長できると思ったんです」

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