車イス生活の仲間のためにも。滋賀大会で連戦好投→怪腕の評価が急上昇 (3ページ目)

  • 沢井史●文 text by Sawai Fumi
  • photo by Sawai Fumi

 練習試合では先発として長いイニングを任されることが増え、自然と責任感も生まれた。秋の公式戦が始まると、念願の背番号1を背負った。そして、期待に見事に応えてみせた。

「もともと自分はゼロで抑えられるようなピッチャーじゃなかったのに、滋賀学園や近江との戦いを通して、強い気持ちを持つことの大事さを学びました」

 昨年末には滋賀県選抜チームの一員に選ばれ、オーストラリア遠征を経験した。遠征前に龍谷大の1、2年生と練習試合をし、自慢のストレートで三振も奪った。

 初めての国際試合では「早いテンポで投げる方なのですが......自分のリズムに合わせるのが難しかったです」と苦笑いを浮かべたが、隼瀬にとってはまたとない経験になったのは言うまでもない。

 そしてもうひとつ、隼瀬の気持ちを奮い立たせる存在がいる。チームメイトの山本陸だ。山本は脳性マヒのため手足が不自由で、車いす生活を送っている。野球が大好きで、隼瀬とともに入部した。少しでもチームの力になりたいと、ノックでのボールの渡し役を務めるなど、懸命にチームをサポートしている。

「試合中、陸はいつもスタンドにいるんですけど、マウンドに上がるたびに必ず言葉をかけてくれるんです。それでリラックスできるし、『ああ、そうやな』と気づかされることも多い。陸の頑張っている姿を見ていると、自分も下を向いたり、手を抜いたりすることはできない。僕だけでなく、チーム全員が刺激を受けていると思います」

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