「昭和の野球」の悲劇の当事者は今、
「子どもを守る野球」を教えている

  • 広尾晃●文 text by Hiroo Koh
  • photo by Hiroo Koh

 中学硬式野球の全国大会である「ジャイアンツカップ」は、今年から1日最大80球以内、連続する2日間で120球以内とする球数制限が導入される。

「それは大賛成です。戦い方が変わるのは間違いないでしょうね。複数の投手を最初から用意しないと勝ち上がれなくなります。そういうルールで子どもたちを守り、指導者が変わらざるを得ない状況にしていかなければならないと思います」

 大野はボーイズリーグの指導のかたわら、昨年から小学校の低学年以下の子どもたちを対象に「野球教室」を始めた。

「うちの次男坊は小学5年生で野球チームに入っています。それで息子の野球チームの送迎をしたり、審判をしたりしているのですが、野球をする子どもたちが減っていると肌で感じたんです。大会で入場行進するチームの列がどんどん短くなっている。昔は20~30人は普通にいたのですが、今はその半分ぐらい。いろんなチームをリサーチしたら、低学年は本当にいない。1学年4、5人程度で、10人もいたら大所帯です。

 少子化もあるでしょうが、野球人口の減少はそれをさらに上回っている。沖縄でも空き地が減り、ボール遊びが禁止になるなど、子どもが野球をする環境がどんどんなくなっています。サッカーやバスケットボールなど、ほかのスポーツに奪われているという面もありますが、共働きが増えて、送迎の問題などもあって、何もやらない子どもが増えていることも大きい。部活がしたくてもできない子どもが増えているんです」

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