甲子園で773球→投手生命に終止符。大野倫は強打者としてプロへ進んだ (3ページ目)

  • 広尾晃●文 text by Hiroo Koh
  • photo by Kyodo News

 北照(南北海道)との1回戦は4対3の辛勝。明徳義塾(高知)との2回戦も接戦となったが、6対5で制した。投手としては打ち込まれたが、4番を打つ大野は打撃でチームに貢献。3回戦の宇部商(山口)は7対5、準々決勝の柳川(福岡)も6対4といずれも僅差の勝利をものにした。

「甲子園では1、2回勝てれば......と思っていましたが、打線が活発で勝ち進むことができました。当初、チームメイトも僕の故障について知らなかったようですが、新聞にひじに爆弾を抱えているという記事が出て、そこからチームの戦い方が変わりましたね。『大野は終盤に打たれるので、何とか打線で取り返そう』というのが合言葉になりました。終盤に点を取られるのは織り込み済みで、みんな地に足をつけて戦えたので、慌てなかったですね」

 準決勝の鹿児島実業戦は6回まで7対2とリードしたが、大野は7回以降につかまり4点を失う。それでも辛うじてリードを守り、7対6で勝利。2年続けて夏の甲子園決勝に進出した。

 決勝の相手は創部4年で決勝まで上がってきた大阪桐蔭。決勝前、大野は栽監督から「監督とエースは一心同体だよ」と言われ、覚悟を決めた。しかし同時に「投手としてはこれが最後の試合になるだろう」とも思った。

 沖縄水産は5回表まで7対4とリードしていたが、その裏に6点を奪われ逆転を許すと、その後も追加点を取られ8対13で敗れた。甲子園での6試合をひとりで投げきった大野の投球数は773球に上がった。試合後、大野は栽監督から「お疲れさん、よく頑張ったな」と声をかけられた。

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