センバツ21世紀枠、平田高・植田監督の方針転換は「私立に勝つため」 (3ページ目)

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Inoue Kota

 いま一度、「選手個々の能力、確保できる練習量ともに私立校とは差がある。そういった状況で何を優先して鍛えるべきか」を熟考。打撃ではなく、走塁と守備の強化に時間を割く方針転換を決意した。大幅なスタイルチェンジに合わせて、学びの方法も変革していった。

「この時期から今まで以上に読書に時間を割くようになりました。それまでは、他校に勉強に行かせてもらう時も、私立の甲子園常連校にばかり目を向けていました。"名将"と呼ばれる方々の言葉に触れただけで満足してしまっていたんです。でも、それだけでは意味がない。自分たちと近い環境で練習しているチームからヒントを得ようと考えをあらためました」

 まず足を運んだのが、加古川北(兵庫)を2度甲子園に導いた福村順一が監督を務める東播磨(兵庫)だった。

「加古川北が甲子園で見せたレベルの高い走塁技術を学びたいと思って、福村先生に連絡させていただきました。当時、福村先生は東播磨に赴任した直後で、『まだできていないことばかりで、練習のための練習をやっている段階なんです』とおっしゃっていたんですが、僕としては、むしろその状況がよかった。選手たちに知識が浸透していないなかで、どうやって走塁を身につけさせるかを勉強させてもらいました」

 方針転換の成果は着実に表われ始める。2014年の秋、県大会3回戦で立正大淞南と延長15回の激戦を繰り広げ、7−8で惜敗したが、最終的に立正大淞南は秋の県大会を制覇。優勝校相手に接戦を演じ、新しい野球への手応えを深めていった。

 翌2015年春は、同年夏に甲子園出場を果たす石見智翠館に1−0の完封勝ち。同年秋は県3位で中国大会出場、自身2度目の中国大会で初勝利を挙げた。センバツ出場は成らなかったものの、21世紀枠の中国推薦校にも選ばれた。

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