明石商・中森俊介も155キロが目標。
奥川恭伸の動画鑑賞で気合を注入

  • 沢井史●文 text by Sawai Fumi
  • photo by Sawai Fumi

 球速だけクローズアップされている部分はあるが、中森の場合はキレのあるスライダー、チェンジアップ、落差のあるフォークも操り、ピッチングの精度が高い。それでも狭間監督の中森への評価は厳しい。

「中森が投げた試合を見ると、だいたい点を取られているんです。今夏の甲子園初戦の花咲徳栄戦でも6安打しか打たれていないのに3点も取られている。ホームランもありましたけど......全体的に完封がほとんどない。中森にとって完封できるようになることが、ひとつのターニングポイントになると思うんです」

 その壁を超えようと、フィジカルを重視したトレーニングをこなしながら、フォーム固めに専念。フォームを一から見直し、それぞれの球種の質を上げることがこの冬のテーマだ。尊敬する奥川に近づくためにも、まずは「失点しない投手」を目指す。

 今までは年上のすごい投手を見て走り続けてきたが、この秋、同世代のライバルが現れた。明治神宮大会で優勝した中京大中京の最速148キロ右腕・高橋宏斗だ。神宮大会ではコンスタントに140キロ台後半のストレートをテンポよく投げ込み、制球力もいい。その高橋だが、神宮大会の囲み取材で「ライバルは?」の質問に、中森の名を挙げた。

 そのことについて中森に尋ねると、「左打者へのインズバ(インコースにズバッと決まるボール)がすごい」とすでにチェック済みで、高橋が目標に掲げている「最速155キロ」についても即座に反応した。

「自分も高校入学時から『3年生になったら155キロを出したい』と思ってきました。来年、センバツに出られたら、自分もそれぐらいのスピードを出したいですね。負けられないという気持ちが強いです」

 本格的な冬を前に、決意を新たにするエースの表情がいつも以上に引き締まった。中森の高校野球のラストイヤーは、はたしてどんな色に染まるのか。ひと冬越えて成長したエースがマウンドに立つ姿を、楽しみに待ちたい。

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