あの北京五輪を彷彿とさせる大熱投。
上野由岐子がレジェンドであり続ける理由

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • photo by Jiji Photo

 また、今回はマウンドが硬くつくられており、上野の体には相当な負担がかかった。足がつりかけるなど、ギリギリの状態で投げ続けていた。それでも試合後、上野は冷静な表情でこう語った。

「硬いマウンドで、球数を投げた時の体の変化を試せたのはいい経験になったと思います」

 横浜スタジアムの雰囲気やマウンドの状態......大一番を戦いながら、東京五輪に向けた準備もしっかりと行なっていた。

 そしてもっとも上野らしさを見せたのが、優勝した試合後のコメントだ。

「喜びって一瞬です。でも、この一瞬のために365日、努力している。それがアスリートだと思います」

「優勝したからといって、私にとっては特別な日じゃない。自分へのご褒美もない。365日のなかの一日です」

 あの北京五輪での感動が、来年再び横浜で。そんなことを想像するだけで、ちょっと目頭が熱くなってきた。

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