全国での実績ゼロも社会人で成長。右腕2人が来年ドラフト候補に名乗り (3ページ目)

  • 楊順行●文 text by Yo Nobuyuki
  • photo by Kyodo News

「都市対抗までは習得中だったフォークをものにするため、プレートの一塁側を踏んで投げていたんです。でも今は、カットボールやスライダーをより有効に使うため、三塁側を踏んでいます」

 つまり左打者の夏見に対して、真っすぐも懐(ふところ)をえぐる角度で入ってくるわけで、それが見逃しの三振につながった。

 栗林は、MHPSとの2回戦にも先発。チームは敗れたが、6回9三振無失点の好投を見せ、日本選手権では15回を投げて22奪三振、無失点と完璧なピッチングを見せた。2020年のドラフトで上位候補に挙がることは間違いないだろう。

 もうひとりの注目は、NTT西日本の右腕・大江克哉だ。花園大では、最速150キロのストレートと落差のあるチェンジアップとカットボールを武器に、通算24勝をマーク。入社1年目の今季、「緊張しないタイプ」(大原周作監督)と都市対抗の初戦で先発を任され、勝利投手となった。

 日本選手権でも沖縄電力との初戦に先発し、6回途中まで1失点の好投を見せ、優勝した大阪ガスとの準々決勝でも6回まで無安打、9奪三振の力投。だが、7回に先頭の小深田の打球を右ひざに受け(記録は内野安打)、「足に力が入らなくなった」と無念の降板。その後、チームも逆転を喫することになる。「大江が好投していたのでもったいなかった」と大原監督も無念の表情を浮かべた。

 栗林、大江とも高校時代は甲子園にまったく縁がなく、大学も全国大会での実績はなしという存在だった。それが入社1年から急成長を遂げ、来年のドラフト上位候補へと成長した。そういうこともあるから、野球はたまらなく面白い。

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