全国での実績ゼロも社会人で成長。右腕2人が来年ドラフト候補に名乗り (2ページ目)

  • 楊順行●文 text by Yo Nobuyuki
  • photo by Kyodo News

 愛知大学リーグの名城大では、最速153キロのストレートスライダーを武器に通算32勝を挙げ、プロ志望届を出したが、その理由が負けず嫌いの栗林らしい。

「大学3年の時にユニバの日本代表に選ばれて、(東京)六大学や東都などの選手とプレーしたんです。彼らには負けたくないという思いが強くて......」

 だが、心待ちにしていたドラフトでの指名はなし。心機一転、「大学時代にオープン戦で対戦し、大人の野球をするイメージを持っていた」というトヨタ自動車へ進んだ。

 入社1年目の今年、都市対抗2次予選で4試合に登板し18イニングを2失点と結果を出した。都市対抗本戦は、三菱自動車岡崎との3回戦に先発。勝ち星こそつかなかったが、6回2/3を自責点0と好投。6回まで無安打のピッチングを披露した。

「5回あたりから記録は意識していました。いい当たりが(野手の)正面をついてくれたので......ただ、初回から全力でいったので、2回あたりから今までにない疲れを感じてしまって。完投できるスタミナが課題ですね」

 栗林はそう反省の弁を口にしていたが、藤原航平監督は「ストライク先行で、(打者に)思い切って振らせないところがいい」と称した。

 じつは、この都市対抗で栗林は初戦の先発が予定されていた。つまりは、1年目からエース級の扱いを受けているわけだ。だが、三菱日立パワーシステムズ(MHPS)との初戦(2回戦)、先発したのは東海理化からの補強選手である立野和明(日本ハムからドラフト2位指名)だった。その理由は、「首を寝違えてしまって......チームに迷惑をかけました」(栗林)ということだった。

 都市対抗での3回戦の好投は、罪滅ぼしの意味もあったのだ。さらに栗林は、決勝戦にも先発。ここは3回2失点で降板したが、1年目から大役を任された。

 すでに強豪チームの大黒柱となった栗林。先ほどのマツゲン箕島硬式野球部との初戦では、9回一死一塁の場面で、夏見を145キロのストレートで見逃し三振に仕留めた。「それまでは外一辺倒だったので、インコースは頭になかった」と、クラブ選手権で打率.643で首位打者を獲得した夏見を脱帽させた。栗林が明かす。

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