大阪桐蔭が屈辱の1年をバネに勝利。履正社相手に伝統の粘りを見せた (4ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 あとアウト1つから敗れた昨年の夏もそうだが、これまでの戦いを振り返っても土俵際での粘り腰は大阪桐蔭のイメージだ。だからこそ、土壇場で4点差を追いついた履正社の粘りは「これまでとは違う」と思わせるには十分だった。全国制覇をしたという自信が、この同点劇をあと押ししたのだろう。岡田監督は「9回の粘りは、夏の結果が大きく影響していると思います」と言い、小深田も「夏に勝ったプライドを持ってやっているので、簡単に負けるわけにはいかなかった」と力を込めた。

 ところが----10回表、大阪桐蔭は相手のミスもあり、一挙3点を挙げて試合を決めた。一度は同点に追いついた履正社だったが、最後は大阪桐蔭の目に見えない""に屈したように映った。

 敗れた岡田監督は守りのミスを反省したあと、こうも言った。

「選手層が違います。とくにウチの途中から試合に出る選手と、大阪桐蔭の途中から出る選手とでは、まだまだ力の差がある。そういうところを考えて、やっていかんとダメですね」

 敵将がそう語るように、大阪桐蔭の選手層は分厚いどころか、とてつもなく厚い。岡田監督の発言はけっして負け惜しみではなく、本当にそう実感したのだろう。

 たとえば、10回表にタイムリーを放った代打の前田健伸は、「レギュラーでもおしくない選手」と西谷監督が認めるほどの実力者である。さらに、主将の井駿之裕(しゅんのすけ)も背番号は14。また池田をはじめ、今年入学してきた1年生のなかにU15日本代表の選手が5人もいる。選手の経歴を見れば、大阪桐蔭のほうが一枚上だ。だからといって、それで勝てるほど甘いものではない。大阪桐蔭の強さとは"粘り"であり、伝統としてしっかりと受け継がれている。

 西野は9回裏に追いつかれた時の心境を、次のように語った。

「履正社相手にすんなり終わらないと思っていたので......。それに、同点にされたあと、1年生が頑張って投げていたので、今度は僕らがなんとかしようと思っていました」

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