大阪桐蔭が屈辱の1年をバネに勝利。履正社相手に伝統の粘りを見せた (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 その履正社よりもさらに強力なのが大阪桐蔭打線だ。野手を中心に指導している橋本翔太郎コーチも「私が大阪桐蔭に来て、今回が9チーム目になりますが、秋の段階でのバッティングで言えば、これまでで一番です」と断言する。

 たしかに、藤原恭大(ロッテ)や根尾昂(中日)を擁したチームでも、この秋の段階でそこまでの迫力、つながりはなかった。大会途中から1番に定着した1年生の池田陵真(りょうま)は、中学時代はU15日本代表の4番打者。このほかにも、強打の吉安遼哉、今年夏も主軸として活躍した西野力矢、仲三河優太、船曳烈士......実力者が居並ぶ打線は、大阪桐蔭史上最強の呼び声が高い。

 その決勝戦、立ち上がりから両チームバッテリーの厳しい攻めが光った。大阪桐蔭の左腕・藤江星河(せいが)、履正社の右腕・岩崎峻典(しゅんすけ)とも、躊躇なくインコースに投げ込み、相手打者を容易に踏み込ませなかった。

 ゲームが動いたのは5回表、大阪桐蔭が3番・西野のタイムリー二塁打で先制。さらにランナー二、三塁で4番の仲三河が、広い大阪シティ信金スタジアムのライトへ文句なしの一発。まるでプロ野球の試合を見ているような攻めで、一気に4点を奪った。

 6回裏に履正社が2点を返すも、大阪桐蔭が7回表に2点を取り返し6-2。ただ、試合自体は点差ほど一方的な印象はなく、あと1本履正社に出ていれば......まったく逆の展開になっていても不思議ではなかった。

 そして迎えた9回裏。履正社は7回途中から登板の竹中勇登(はやと)を攻め、1番・池田からの3連打でまず1点。なおも無死二、三塁から、関本がレフトに起死回生の一発を放ち、土壇場で試合を振り出しに戻した。

 試合後、岡田監督はこのシーンについてこう語った。

「あそこでホームランが出るとは、さすがにびっくりしました。それに、こういう展開はどちらかというと、ウチはやるよりもやられる側だったので......

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