大阪桐蔭が屈辱の1年をバネに勝利。
履正社相手に伝統の粘りを見せた

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 プロ野球の日本シリーズが開幕する1019日、関西の高校野球では近畿大会が開幕する。今年夏の甲子園に出場した履正社(大阪)、明石商(兵庫)、智弁和歌山、近江(滋賀)ら、16校が来春のセンバツ大会出場をかけて戦う。例年どおり、力のあるチームが揃ったが、なかでも注目は大阪1位校の大阪桐蔭と、同2位の履正社の戦いぶりだろう。

前チームから主軸を打つ大阪桐蔭のスラッガー・西野力矢前チームから主軸を打つ大阪桐蔭のスラッガー・西野力矢 この1年間で両校の立場は入れ替わった。

 昨年はまず、夏の北大阪大会準決勝で対戦。劣勢と見られていた履正社が、春夏連覇を目指していた大阪桐蔭を9回二死までリードと追い込んだ。しかし、そこからあと1つのアウトが取れず、逆転負け。薄氷の勝利をつかんだ大阪桐蔭は、その後、北大阪代表として甲子園に出場し、全国制覇を達成。史上初の同一校による2度目の春夏連覇を果たした。

 そして秋、今度は履正社が大阪大会決勝で大阪桐蔭を52で下し、雪辱を果たした。大阪1位として臨んだ近畿大会でもベスト4となりセンバツ出場。夏も大阪大会を勝ち抜き、全国制覇へとつなげていった。

 対して大阪桐蔭は、大阪2位で進んだ近畿大会でベスト8入りするもセンバツ出場はならず、夏も大阪大会準々決勝で金光大阪に敗れ、2011年以来となる甲子園出場のない1年を送った。

 履正社の岡田龍生監督に全国制覇の効果を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「選手たちにとって大きな財産になったことはもちろん、履正社野球部見る周りの目も変わりました。ウチの選手はみんな自宅からの通いなので、登下校の時に『あっ、履正社の野球部や』と声をかけてもらったり......そういうのが増えたと聞きます。そうなると選手たちも『頑張らないといけない』『しょうもないことはできない』と気持ちが引き締まる。今のところ、そういう意味でも夏の結果がいい方向に出ていると感じています」

 そして"大阪2強"を形成してきたライバル大阪桐蔭について尋ねると、こう語った。

「大阪桐蔭に対して、どうこうというのはありません。普段から意識してやっているわけでもありませんし......。新チームを見ても、大阪桐蔭はいつもどおりすばらしい選手が揃っています。とにかく、(履正社も)いつもどおりやるだけです」

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