U-12監督の仁志敏久が語る指導法。「ただ見守ることが一番難しい」 (3ページ目)

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  • 木鋪虎雄●写真 photo by Kishiku Torao

――大谷翔平など、これまでの日本の常識を超えた選手たちが出てきています。高いポテンシャルを持った選手がいた場合、指導者はどのように育てていくべきでしょうか?

仁志 選手の意志次第ですね。高いポテンシャルがあってしっかりとした目標を持っている選手がいた場合、大人が手を加える必要はまったくないと思います。ただ単に見守っていればいい。「ああすごいな」と思っていればいい。そういう選手には、考えるきっかけを与えてあげればいい。技術的な意見や押しつけるような指導が、本人にとって的確な答えになることはほぼないです。大人ができることは、何となく感覚を伝えてあげることで、それができなければ、ただ見ているだけ。指導のなかで一番難しいのは見守ることなんですよ。

 ただ子どもなので、野球以外のところでは厳しくしたほうがいいと思います。それは野球とはまったく別のことなので、グラウンド外でもちゃんとできるようなしつけはするべきだと思います。

 それから侍ジャパンU-12の子どもたちにも必ず言うことがあります。それは上手な子は称賛されることが多いのですが、「褒められた言葉をそのまま受け取るな。称賛は半分だけいただいておきなさい」と言っています。そういう特別な才能を持っている子には、ただ褒めるだけでなく、「ほかの子たちよりももっと高い目標を持たないとだめだぞ」と伝えています。

――大谷翔平のような選手は今後も出てくるのでしょうか?

仁志 佐々木朗希選手(大船渡)もそうですが、また違った形で進化した選手が出てくると思います。ただ近年は、スター選手はピッチャーが多いですよね。バッターは少ないんです。少年時代、特に中学校時代に教えすぎたり、練習をしすぎたりしてほぼ完成形に近づいてしまうのが原因かもしれません。そこから高校やプロであまり伸びないんだと思います。バッターのスター選手も育てていくには、指導する側も考えないといけないと思いますね。


プロフィール
にし・としひさ 1971年10月4日生まれ、茨城県出身。常総学院高では夏の甲子園に3年連続で出場。卒業後は早稲田大、日本生命へと進み、96年に巨人に入団。強打の内野手として活躍し、1年目で新人王を獲得。その後ゴールデングラブ賞4回、日本シリーズ最優秀選手など数々のタイトルに輝いた。2007年に横浜ベイスターズに移籍したのち、10年にアメリカ独立リーグへ移籍するも、同年ケガにより引退した。14年より侍ジャパンU-12監督を務める

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