BC屈指の強打者がドラフト指名に強気「NPBの1軍でも打てます」 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 BCリーグ入りしてから捕手に挑戦していた速水は、クセのあった送球動作を矯正しようとして、むしろ悪化させていたのだ。

 あるスカウトからはこう言われた。

「バッティングはいいから、あとは投げ方だけだね。肩はいいんだけど、見栄えが悪いと獲りにくいんだよ」

 それからシーズンオフを挟み、迎えた4年目の春。ダイヤモンドペガサスの練習を見て驚いた。速水の送球動作が、ごく普通になっていたのだ。スローイングが極めて鋭いというわけではないが、少なくともスムーズな動きでスローイングできていた。オフの間に何があったのかを尋ねると、速水はこう教えてくれた。

「オフに知人に見てもらって、体の構造から勉強してフォームを直したんです。今までは体をひねりすぎて、体の回転とリリースが合っていませんでした。ホームから二塁まで38メートルしかないので、ひねらないで投げることを意識したらだいぶスムーズに投げられるようになりました」

 4年目の今季はリーグ64試合に出場して、打率.33114本塁打、62打点と結果を残した。「脱力」をテーマにスイング修正に取り組み、「力感なくホームランを打てるようになってきた」と手応えを覚えている。右方向への長打も増え、「高校時代に右打ちばかりしていたことが今になって生きている」と過去を前向きにとらえられるようにもなった。

 それでも、ドラフト会議まで1カ月を切った今も、速水の手元にはNPB球団からドラフト会議の事前資料となる調査書は届かない。速水は「守備が下手だと思われているんですかねぇ」とつぶやいた。

「リーグで50試合以上にマスクを被った捕手のなかでもパスボールは少ないし、盗塁阻止率だって3割5分は刺しているんですけどね。別にすごい数字ではないですけど、投げて、止めることに関しては普通にできていると思います」

 守備が武器になるとは思っていない。現実的にはNPBレベルではファーストか指名打者で、捕手としては故障者が出た場合などの緊急時にマスクを被る程度だろう。それでも課題の送球動作を改善し、まだまだ打者として上のレベルにいけるという自信もある。それなのにドラフト戦線で自分の名前が挙がらないことがもどかしい。

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