ひょんなことからNZでプロ野球選手になった25歳。NPB入りの夢を追う (3ページ目)

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi
  • photo by Asa Satoshi

 結局、本拠地はシーズン中に完成せず、だからといっていつまでもスタジアムと言えないようなところで公式戦をするわけにはいかない。そこで、シーズン後半戦のホームゲームはオーストラリアに渡って消化することになった。

 一事が万事この調子で、遠征時のミールマネーも10ドルしか出ないときもあれば、突然50ドル支払われるときもある。金子は言う。

「基本、ニュージーランド人というのは、そんな感じなんです。普段の仕事も3時か4時には終わっちゃう。野球もそんな感じで、ロッテの選手はアップ時間があまりにも短いので驚いていました。ランニングもほとんどしない。だから、日本人と台湾人の選手は試合後に集まってやっていました。ある意味、野球観が変わりましたね」

 シーズン前のキャンプ終了後、残念ながら金子は開幕ロースターに入ることができなかったが、チームが最初の遠征から帰ってきた翌週の地元開幕シリーズからロースター入りできると告げられた。

 月給10万円ほどのリーグだが、ベンチ入りしてみると、さすがプロ。クラブチームとは比べものにならないレベルの高さだった。金子の役割は、正捕手、サブに続く第3の捕手。そんな金子にチャンスが巡ってきたのは、ロースター入りして2カード目の第2戦のことだった。正捕手のケガにより、先発でマスクをかぶることになったのだ。そしてこの日の先発投手は、ロッテの種市篤暉だった。

「試合前は全然できないんだろうなと思っていたんです。正直、足を引っ張るんじゃないかと......。でも実際は、2対1(5回1失点)とちゃんとゲームは成立しました」

 その試合の相手となったキャンベラ・キャバルリーの先発は、DeNAの今永昇太。金子は2打席立って、すべてストレート勝負の2三振に打ち取られたが、絶望感はなかった。

「すごい差を感じたわけではなかったですけど、やっぱり真っすぐはすごかったですね。プロ野球の一軍でローテーションを張る投手の球だなと思いました」

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