2019.08.25

ひょんなことからNZでプロ野球選手に
なった25歳。NPB入りの夢を追う

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi
  • photo by Asa Satoshi

 オークランドにある知り合いの家に転がり込んで、語学学校へ通う毎日。やがて野球チームを見つけて参加することになった。その後、ニュージーランドで働きながら現地に滞在できると”ワーキングホリデービザ”に切り替え、月6万円のアパートを借りて生活し始めた。

 そうやってニュージーランドでの”自分探し”をしている金子に、突然、オークランドにプロ野球チームができるという話が舞い込んできた。さらに、選手集めのためにトライアウトを行なうと。

 ABLはシーズンを前にして、国境を越えたエクスパンション(球団拡大)を行なった。その結果、2013年の第3回WBCから予選に参加しているニュージーランドに市場価値を見いだし、オークランド・トゥアタラを迎え入れるというのだ。

 この新球団はニュージーランド人主体とのことだったが、国籍は問わないという。「とりあえず受けてみよう」と会場に向かうと、グラウンドには100人ほどの受験者がいた。そこから最終的に15人ほどに絞られたのだが、そこに金子も含まれていた。

 だがすぐに契約というわけではなく、シーズン前のキャンプに自費参加して、その後、チームの状況に応じて選手契約を結ぶというものであった。要するに、練習生だ。

 ABLは”一軍”しかなく、各チームそれなりの数の練習生を抱えていて、ケガなどでロースターに穴が空けば、練習生をコールアップして契約を結ぶ。ちなみに、給料は選手契約しない限り出ないという。

 決していい条件ではなかったが、金子に選択肢はなかった。どのみち年末にはビザが切れることになっており、シーズンが始まればオーストラリア遠征にも参加するつもりでいたので、それまで勤めていた職場には別れを告げた。

 ただ、ニュージーランド初のプロ球団とは名ばかりで、当初、改装して使用するはずだった本拠地球場は工事が間に合わず、郊外にある野原に外野フェンスを張り、内野に簡易スタンドを設置して開幕を迎えた。これにはロッテの選手も目を丸くしていた。