「佐々木朗希の登板回避」問題。
スカウトたちも賛否両論、リアルな声

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

 佐々木朗希(大船渡)が出場しなかった夏の甲子園だが、連日多くの観客が詰めかけ、あらためて高校野球の人気の高さを実感した。

 また夏の甲子園といえば、普段なかなか会う機会のない記者やスカウトなど、多くの方に出会う。普段なら近況報告でもしながら他愛のない会話が続くのだが、今年に限っては「佐々木朗希、見ました?」があいさつ代わりになった。

 佐々木擁する大船渡は岩手大会を順調に勝ち上がり、決勝で花巻東と対戦した。だが、この大一番に佐々木は登板せず......というか、試合に出場することなく、高校野球生活にピリオドを打った。

 監督にもいろんな考えがあったのだろうし、チーム事情もあったはずだ。そのことについて答えを求めたりはしないが、プロのスカウトたちは「佐々木の登板回避」をどう受け止め、何を考えたのだろうか。

岩手大会決勝で敗れ涙を流す大船渡・佐々木朗希(左から2人目)岩手大会決勝で敗れ涙を流す大船渡・佐々木朗希(左から2人目) セ・リーグのあるスカウトは「ケガなく、投げられる状態であれば投げさせてあげたかったと」と言って、こう続けた。

「予防という点においては最善の策をとったと思いますが、ピッチャーというのは大舞台を経験することで成長していくわけです。"勝てば甲子園"という舞台は、人生のなかでも1、2位を争うぐらいの大一番なわけで、それを経験できなかったというのはかわいそうだと思いました。そこで勝って、さらに甲子園となると......昨年の吉田輝星(現・日本ハム)も甲子園で試合を重ねるたびに成長していった。高校生というのは、大事な試合をどれだけ経験できたかによって、成長のスピードは変わるんです。体を守るのは大前提ですが、甲子園や甲子園を賭けた舞台というのも、間違いなく財産なわけです」

 また別のセ・リーグのスカウトの意見はこうだ。

「(指名を)ためらう球団は出てくると思いますよ。いろんな事情があったとはいえ、佐々木くんはすっきりしない終わり方になってしまった。投げないにしても、彼はチームの4番を打つ選手です。打者としても出なかったということは......我々が最初に思うのは故障です。仮にまったく問題ないにしても、消化不良のまま終わってしまった感は否めません。それだけでも印象は悪くなってしまうものなんです」

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