歴史的不作にスカウトはガックリ。スピード、パワー偏重の野球に喝! (2ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 どのスカウトも絶賛が続いたが、唯一課題となるのが変化球の精度。決め球であるスライダーはまだまだ発展途上だ。

「ストレートが150キロ出るのに、スライダーは125128キロぐらい。腕が緩むというか、力が抜けすぎている感じがある。しっかり腕を振って投げることができれば、133135キロぐらいは出るはず。現時点ではスライダーというよりもスラーブ。高校生相手なら問題ないと思いますが、プロでは打たれます」(パ・リーグスカウトC氏)

 とはいえ、それは要求されるレベルが高いゆえの課題であり、完成度は高校屈指。プロでも早い段階から一軍で活躍できるだろう。

 奥川に関しては口が滑らかなスカウトたちも、ほかの選手の話題になると一様に口が重くなる。そんななか、名前が挙がったのが、霞ケ浦の鈴木寛人と津田学園の前佑囲斗(まえ・ゆいと)の両右腕だ。

 鈴木は、186センチの大型右腕。初戦の履正社戦では3本のホームランを浴びるなど3回途中でKOとなったが、最速148キロのストレートとキレのあるスライダーは可能性を感じさせた。ただ、スカウトの評価は大きく分かれた。

「威勢がいいし、バネがある。リリーでパチッとボールを叩けるし、いい真っすぐを投げていた。外れ1位もあるでしょう」(セ・リーグスカウトD氏)

「変化球はキレがあるし、投手としてすばらしい感覚を持っている。ただ、身長のわりにストレートに角度がないから空振りが取れない。ドラフトにかかっても4、5位ぐらいじゃないかな」(パ・リーグスカウトB氏)

 前は182センチ88キロとガッチリした体躯の本格派右腕。球速は常時140キロ前後だが、素材のよさが光る。

「スピードよりも球質がいいので、まだまだ伸びしろがある。ツーシーム、カットボール、スライダーと球種が多く、器用なところもある。ただ現時点でウイニングショットがないので、これからどう磨いていくか」(パ・リーグスカウトC氏)

「ストレートは高いし、変化球もそれほどの威力がない。それでも春夏連続して甲子園に来られたのは素材がいい証拠。フォームのバランスもよく、ボールに磨きをかけて制度を高めていけば面白い存在になります」(セ・リーグスカウトE氏)

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