鶴岡東が好投手を次々攻略。
「庄内の暴れん坊」打線は多彩な打者が揃う

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by OHtomo Yoshiyuki

 習志野のエース右腕・飯塚脩人は初戦の沖縄尚学戦で6者連続三振、鶴岡東戦でも4者連続三振を奪うなど投球を見せていた。だが、鶴岡東は5番の丸山が2打席連続本塁打を放ち、飯塚を粉砕する。1本目はインコース高めの厳しいコースをレフトスタンドに運び、2本目はスライダーを叩いて風に乗ったとはいえライトスタンドに放り込んだ。丸山の「来た球を打つ」という言葉通り、研ぎ澄まされた反応が超人的な結果を生み出したとえそうだ。

 ただ、不思議な点もある。これだけの打線にもかかわらず、鶴岡東というチームからは「強打」を前面に押し出す気配がないことだ。メディアから伝わる鶴岡東の情報は「状況に応じたバッティング」や「鍛え抜かれた守備」といった要素が多い。もちろん、細部にわたり修練を積んでいることはわかるが、このチームから受ける最大の衝撃は「振りの強さ」のはずだ。

 もうひとつ特徴をあげると、打者の打ち方がバラバラだということ。強打線のチームは良くも悪くも同じような打撃フォームの選手が並ぶことが多い。だが、鶴岡東の打者はバリエーションに富んでいる。山下はまるで釣り人のように、へその前でバットを垂らしてからトップへ引き上げる変則打法だし、丸山は足を高く上げてフルスイングする。

 佐藤俊監督に聞くと、「フォームは選手のやりたいように任せています」と言う。

「基本的なことは教えますが、インパクトやタイミングの部分はそれぞれの感性が大きいですから」

 変則打法の山下はもともと7番などの下位打線を打っていたが、今年3月に佐藤監督から「打ち方が硬いから、手を柔らかく使ったら?」というアドバイスを受け、打撃が開眼した経緯がある。ただし、佐藤監督は「最初は手の動きが小さくて、だんだんエスカレートして今の『一本釣り』みたいな動きになってしまったんですけど」と笑う。

 佐藤監督が選手の感性を生かす方針を取っているせいか、丸山や山下のように感覚肌の打者がのびのびと力を発揮している傾向がある。だが、なぜ鶴岡東の打者が力強くスイングできるのか、という答えはなかなか見つからない。

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