履正社ナインが語る豪打の秘密。ねじ伏せられた屈辱が才能に火をつけた (5ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 その大阪大会で桃谷は25打数10安打(打率.400)の成績を残し、甲子園でも初戦の2本塁打を含む4安打と好調を維持している。なにより積極的に打ちいく姿勢が印象的だ。

「もともと積極的にいくタイプで、センバツの奥川くんと対戦した第1打席でも初球から振っていったんです。でも、とらえられなかった。そうなるといいピッチャーを打つのはどんどん難しくなっていくので、狙った球を1球で仕留められるように......そこはかなり意識してきた部分です」

 井上、桃谷のふたりだけではない。あの星稜戦、スタメンに並んだ9人のうち7人が2三振以上を喫した。2年生ながらクリーンアップに座る小深田大地も「本当にいいピッチャーは一発でとらえないと、その打席で甘い球はこない。センバツ後はそこを強く意識して打席に立つようになりました」と言う。

 またマネージャー兼選手という"異色の球児"として話題になり、この夏の甲子園で8打数6安打(打率.750)と大当たりの西川黎は、次のように好調の理由を挙げる。

「いい投手ほど、ボール球に手を出さないようにすることと、球をしっかり絞っていかないといけない。そこは徹底してきました」

 ミートポイント、タイミング、好球必打、1球で仕留める集中力と技術、そして選球眼......どれもバッティングの基本であるが、奥川にねじ伏せられた屈辱が、才能豊かな選手たちの負けん気に火をつけ、さらなる成長につなげていった。

 2回戦の試合後、岡田監督は盛り上がる報道陣の熱を冷ますように、最後にこう言った。

「ここまで打つほうは対応してくれていますけど、この先、サイドハンドとか左投手の対戦になった時にどうか......」

 3回戦の相手、高岡商(富山)のエース・荒井大地はサイドハンドだ。

 はたして3回戦は「どっちの履正社か?」。星稜と、そして奥川ともう一度対戦するためにも、まだ負けるわけにはいかない。

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