履正社ナインが語る豪打の秘密。ねじ伏せられた屈辱が才能に火をつけた (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 たしかに、「強打線」と言われる履正社だが、昨年秋の近畿大会では龍谷大平安(京都)の野澤秀伍に7回を3安打無得点に抑えられ、今年春のセンバツでは星稜(石川)の奥川恭伸に17三振を奪われて完封負けするなどの一面も併せ持つ。

 履正社の練習試合を見た関係者からは「あの打線はえげつない。どのバッターもピンポン球みたいに飛ばす」という声が上がる一方で、「きっちり攻めればそこまで怖くない」と語るライバル校の監督がいたり、履正社打線の評価は真っ二つに分かれていた。つまり、霞ケ浦との試合前に持っていた興味には、そうした背景があったのだ。

 結果から言うと、これまでの評価をさらに上回る強打で、霞ケ浦のプロ注目右腕・鈴木寛人を3回途中ノックアウト。終わってみれば、2006年の智弁和歌山に並ぶ大会タイ記録の1試合5本塁打を含む17安打11得点。圧倒的な破壊力を甲子園の舞台で見せつけた。

 猛打の理由として、トレーニング効果を挙げる記事をいくつか見かけた。もともと履正社は「選手が高校卒業後も伸びるように......」と、専属トレーナーをつけ、体づくりに早くから取り組んできたチームだ。トレーニングメニューも試行錯誤を繰り返しながら向上し、春季大会後に計測したスイングスピードでは10人もの選手が140キロを記録したという。

 霞ケ浦戦の2日後、履正社の練習グラウンドを訪れると、岡田監督は「スイングスピードというよりも......」と強打の理由についてこう語った。

「選手たちが一番実感しているのは、冬に鍛えた筋肉を維持しながら夏を戦えているということだと思うんです。例年、冬の間はウエイトも多くなって、たとえば12月や1月にスクワットで150キロを上げたとします。でも、シーズンになって体が疲れてきたりすると、150キロ上げられていたのが120~130キロに落ちてしまう。

 今年はこの落ち幅を減らそうとトレーナーとも相談して、シーズンになってもバッティング練習の時間を削ってウエイトに回したり、冬につけた力を維持するようにやってきました。実際、例年に比べて落ち幅は少なくなり、夏になってもバットが振れているという感覚を持っているはず。この点が大きいと思います」

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