「牛鬼打線」宇和島東の復活へ。名将の教えを継ぐ新監督が再出発を誓う (3ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 長滝監督は「楽しそうにプレーしていた」と選手たちを評価したが、のびのびとさせた分、大事な場面でミスが出たとも言えるかもしれない。宇和島東が再び甲子園に戻ってくるために必要なものは何なのか。長滝監督が続ける。

「宇部鴻城の岡田投手は、どんどんストライクを取ってバッターを追い込んでいきました。うちの舩田にしてほしかったピッチングをやられてしまいましたね。まだ"牛鬼打線"と呼ぶには力不足ですし、ピッチャーに際どいところを攻められると打てない。そういう部分も鍛えて、甲子園に戻ってきたいです」

 その課題は、重要なポジションを担う2年生に託された。

「新チームには甲子園で投げたふたりの2年生と、ブルペンでピッチング練習をしたもうひとりを加えた3人のピッチャーがいます。これまでは"仲良しこよし"だったんですが、今後は切磋琢磨して競い合ってほしい。甲子園での経験が、これからの練習の取り組みにいい影響を与えてくれると思います。

 オンとオフの切り替えも大切です。盛り上がる場面では盛り上がり、緊迫した場面ではしっかり集中する。大事な場面でのミスが勝敗を左右することになりますから。そのあたりを今後の練習で取り入れていきたいですね」

 新チームで主軸を打つことになる赤松はこう言う。

「YouTubeでよく、昔の宇和島東の動画を見ます。打線に切れ目がなくて、力強い。でも、自分たちのほうが笑顔は多くて、楽しんで野球をやれていると思います。昔ほどは打てなかったですけど、これまでやってきたことを甲子園でも出せたのでよかった」

 監督就任から4カ月の長滝監督は、取材をこう締めた。

「以前の宇和島東は、練習のときから全国での戦いを意識していました。今回の甲子園が復活への第一歩。打線のほうもまだ"子牛鬼打線"です。これまでは『甲子園に行くため』の練習をしてきましたが、これからは『甲子園で勝つためには』という意識づけをしていこうと思います」

 この日、確実にひとつ階段を上がった。彼らが再び甲子園に戻ってきたとき、どんなチームに変わっているだろうか。

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