仙台育英のスーパー1年生育成法。「1週間200球でも投手は育つ」 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 仙台育英の須江監督は、「投手の腕(ヒジと肩)は消耗品」という考え方の持ち主である。投手には1週間に投げた球数を記録させ、基本的に合計300球を超えないようコントロールしている。しかも、その「300球」とは実戦や投球練習だけでなく、キャッチボールやシャドウピッチングで腕を振った回数も含まれる。笹倉や伊藤のような1年生になると、1週間で200球にも満たない。須江監督は「それで十分ボールは速くなりますし、ピッチャーは育っています」と力説する。

 また、笹倉と伊藤の指導方針については「慎重に育てないといけないと思っています」と言って、こう続けた。

「この夏はショートイニングしか考えていません。1人でアウト6個、2人合わせてアウト12個取ってくれたら万々歳ですよ。7~8月は結構投げているので、9月はできれば休ませたいですね。でも秋の県大会が始まってしまうので、やはりショートイニングでいくことは変わりないのかなと」

 そして須江監督は、2人の未来への道筋としてこんなたとえ話をしてくれた。

「『ウサギとカメ』で言えば、笹倉がカメで伊藤はウサギですよ。笹倉は完成度の高い投手ではないので、目先の結果を追わせる時と追わせない時をしっかりと分けたい。将来160キロを投げるような、菊池雄星投手(マリナーズ)を追える可能性がありますから、スケールを小さくしたくないんです。

伊藤は逆に、今のような器用さだけで終わらせてはいけない。今年の高校生でいえば、奥川恭伸くん(星稜/石川)がモデルになってくるでしょう。道順は違っても、2人とも大きく育てるということは同じです」

 そんな指揮官の思いは、2人にも通じているのだろう。笹倉も伊藤も「スーパー1年生」と騒がれることについては、「何も変わりません」と口を揃えた。騒がれたからといって、ボールが速くなるわけでもコントロールがよくなるわけでもない。伊藤は「やることは変わりません」と淡々と語った。

 自分ができることは、今までの自分を超えることだけ。2人の関心はさらなる高みにある。

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