仙台育英のスーパー1年生育成法。「1週間200球でも投手は育つ」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 一方の笹倉はというと、じつは伊藤ほどの驚きはなかった。たしかにストレートはバットを押し返す強さがあり、スライダーのコントロールもまとまっていた。それでも、私は笹倉のスライダーをとらえ、左中間へとヒット性の打球を運ぶことができた。あいにく私の打球方向を予測していた秀光中の見事なフォーメーションによって、センターフライに終わったことは今でも無念でならない。また、この時の笹倉は足首骨折から復帰して間もない時期で、コンディションが万全ではないという要因もあった。

 あれから1年が経ち、秀光中から系列校の仙台育英に進学した2人は甲子園出場チームの立派な戦力になっていた。

 8月9日の飯山(長野)との初戦、先発マウンドに立ったのは笹倉だった。ひと目見て、中学時代よりも投球フォームに連動性が出てスムーズになったように感じた。試合後に本人に確認すると、「軟球は腕だけの力で強く投げられますけど、硬球は腕だけだと球がいかないので。全身を使って回転のいいボールを投げたいんです」と語っていた。

 予定の3イニングをしっかりと投げ抜き、被安打1、奪三振2、与四球1、失点1。相手に先取点を許したものの、「テンポよく投げられたので、その後の得点につながったと思います」とたくましかった。2日前に3年生左腕の鈴木日向(ひゅうが)に教わった即席のチェンジアップで三振を奪うという収穫もあった。

 仙台育英は5回に10得点を奪うなど、大量得点で試合を決めた。そして18対1の7回表からマウンドに上がったのは伊藤である。

 投球練習の時点で、審判から「早く、早く」と急かされる甲子園特有の洗礼を浴びた。自分のリズムで試合に入っていけず、初球の変化球はすっぽ抜け。それでも、2イニングを投げて被安打1、奪三振1の無失点。試合後、「自分のテンポでは投げられませんでしたが、それもいい経験をしました。次からは丁寧に投げたいです」と反省の弁を口にした。

 この日の最高球速は、笹倉が142キロで伊藤は140キロ。上々の甲子園デビューと言えるだろう。しかし、彼らにとってここは本格的な野球人生の入口付近。仙台育英には、この有望な1年生投手たちを今後どのように育てていくのかが問われていく。

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