背番号17の記録に残らない好プレー。国学院久我山を初勝利に導いた (2ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 そんなエースの奮闘に応えた打線は15安打を放ったが、それを得点に結びつけたのは積極的な走塁だ。常に次の塁を狙う走りで、前橋育英の4つの失策を誘発する形になった。三塁コーチャーとして何度も腕をぐるぐる回し、ランナーを導いた中澤はこう話す。

「(国学院久我山も)守備ではミスもありましたが、全員で際どいところをしっかり守ってアウトを取りました。積極的な走塁は、このチームになって徹底していることのひとつ。タイムリーヒットを打った時には、打者が次の塁を狙うことを心がけています。それは、普段の練習や練習試合、西東京大会の時からずっとやっていたこと。常に全力疾走をすることで、相手にプレッシャーをかけられたんじゃないかと思います」

 凡打しても全力で一塁を駆け抜け、フライでも二塁まで走ることを徹底してきたという。ほかにも、中澤がキャプテンになってから言い続けたことがある。

「チーム全員に、それぞれ役割があるということ。試合に出る選手は試合に集中する。スタンドで応援してくれているメンバー外の選手は全力で応援する。僕なら三塁コーチャーの働きをするということですね。それぞれの役割を、普段の生活、練習から意識するように言ってきました。『自分の役割を全力で果たし切ろう』と。このチームは、自分の役割に徹することができていると思います」

 中澤自身、西東京大会では選手としての出場なし。この日もそうだった。もちろん、『試合に出たい』という気持ちはある。

「でも、勝つことが最優先なので。自分の役割に徹することだけ考えています。練習ではバッティングピッチャーをしたり、選手の表情を見ながらコミュニケーションをとったり。試合では、三塁コーチャーとしての判断を大切にしています」

 この試合では"有形無形の力"が国学院久我山の選手たちの背中を押した。アルプススタンドに陣取った大応援団も、得点のたびに大歓声を送った。

「ものすごい応援をしていただいて、本当に心強いです。『甲子園で校歌斉唱する』というのは、選手だけでなく、卒業生、関係者の方々の願いでした。そういう思いがスタンドから僕たちのところまで届きました。応援の力ってすごいですね」

 国学院久我山の2回戦の相手は、敦賀気比(福井)。またも優勝経験(2015年春)のある強豪が相手だが、全力疾走を貫いて再び校歌を歌うことができるか。

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