星稜・奥川恭伸は完封勝利でも50点。まだまだ武器を隠し持っている (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 立ち上がりの奥川の投球は、非の打ちどころがまったくなかった。

 旭川大高の1番打者・佐藤一伎(いつき)を自己最速タイとなる153キロで空振り三振。2番の持丸泰輝は糸を引くような151キロのストレートで見逃し三振。3番の菅原礼央(れお)にはスライダーでカウントを整え、最後も外角への131キロのスライダーで空振り三振。

 試合後、奥川は初回の三者三振についてこう振り返っている。

「立ち上がりが一番大事なので、意図的にギアを上げました。初回のピッチングが今日の9イニングで一番よかったと思います」

 奥川が150キロ台のボールを投げるたびに、スタンドからは大きなどよめきが起きた。恐るべきことに、奥川はこの観衆のリアクションすら意図的に「援軍」に換えていたのだと言う。

「どよめきが起きたことはすごく楽しいなと感じましたし、球場の雰囲気を変えることは大事だと思っているので。雰囲気をこちらに持ってこられたのはよかったです」

 結果だけを見れば、9イニングを投げて被安打3、奪三振9、与四球1の完封勝利。球数はわずか94球だった。しかし、奥川は「勝ち切れたことに関してはよかった」と語った以外は、反省の弁ばかりが口をついた。

「今日は風に助けられました(旭川大高・持丸が9回に放った大飛球が強い逆風に戻されてライトフライになったことに対して)」

「7~8割の力で投げるときのボールをもう少しコースに投げないと痛打されるので」

「変化球が抜けていたので、次は精度を高めてコントロールよく投げられたら」

「(「今日の自分の投球に点数をつけるなら?」の問いに)チームとして勝てたのはよかったですけど、内容だけ見たらまだまだなので。50点くらいですね」

 たしかに完封したとはいえ、旭川大高打線にバットの芯でとらえられるケースも目立ち、奥川が言うように反省点の残る投球だったのかもしれない。

 しかし、圧巻の初回を終え、2イニング目以降の要所をピシャリと抑える投球も、じつに奥川らしいと感じるのだ。

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