2019.08.06

佐々木朗希だけじゃない。甲子園に
出られなかった多士済々の精鋭たち

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Nikkan sports、Inoue Kota

 打席での姿、ランニングフォームからスローイングの身のこなしまで、柔軟性とバランスのよさが見てとれる。本格的に野球を始めたのは中学からだが、祖母が日本舞踊の先生をしており、塩崎も幼い頃から優雅に舞っていたという。その頃に覚えたしなやかな所作が、プレーの端々に出ている。

 プレーのスピードなら、上田西(長野)のセンター・齋藤慶喜(3年/右投左打)が群を抜く。ベースランニングはもちろんだが、とくに盗塁のスタートとスライディングの速さを甲子園で見たかった。

 齋藤の盗塁のスタートは「速い」というより、一瞬にして爆発するパワーが見ていて伝わってくる。モーションを盗まれたら、もう捕手は「やられた!」と送球意欲を失ってしまうような破壊力。

 本当にすごいランナーというのは、捕手が送球する前に「もうダメだ……」とあきらめさせられ “快足”の持ち主である。

 以前、スポルティーバのコラムで西日本短大付の近藤大樹を紹介させてもらったが、彼と同じぐらいセンスのよさを感じるのが、京都国際のショート・上野響平(3年/右投右打)だ。

 センターが「オーライ!」と手を上げた打球を、背走して、センターとすれ違いざまにグラブに収めたプレーが忘れられない。打球に対する反応、なにより一歩目のスタートのスピードがすばらしい。バットに当たる瞬間、すでに動き出しているのだから、センターの「オーライ」という声はまったく耳に入っていなかったのだろう。

 バッティングはお世辞にも「すごい!」ということはないが、柔軟なスイングでこの夏の京都大会では2本塁打をマーク。今宮健太みたいな選手……甲子園のグラウンドを所狭しと駆け回る姿を見たかった。

 最後に紹介したいのが、徳島商のショート・石上泰輝(3年/右投左打)だ。今年の春、県名で開催された「野球部競技会」で、遠投116m、ベース1周13秒8という抜群の数字をマークしたという。じつは石上だけ、今回紹介したなかで実際に見ていない唯一の選手である。

 噂は以前から聞いていた。「必ずどこかで!」と思っていたら、都合が合わなかったり、雨で順延になったり……「なんとか甲子園で!」の願いもむなしく、準決勝で敗退した。それだけにショックは計り知れない。

 今回紹介した選手たちは甲子園出場こそ逃したが、実力は折り紙付き。必ずワンランク上の世界で活躍するに違いない。甲子園を逃した悔しさをバネに、次のステージでの活躍を願いたい。

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